言語聴覚士ママのBlog/子どもが育つ魔法のことば vol.02
「ことば」を育てるかかわり方
こんにちわ、言語聴覚士ママ、はぐくみです。
みなさん「ことば」をどうやって学んだか覚えていますか?知らないうちに話せるようになっていた方がほとんどだと思います。そのため、ことばの習得方法なんて、覚えていない&言語化できないかのが一般的です。
でも、いざ親になったらふと湧いてくる疑問…「子どもにどうやって言葉を教えたらいいの?」「言葉が遅い気がするけど、どうすればいいの?」などなど。そんな、ことばの習得に対する不安や疑問を言語聴覚士ならではの視点で、わかりやすく解説します。
この記事では、確かなエビデンスのもと、遊びながら子どもにことばを習得させていく方法を具体例と共にご紹介します。よかったら最後まで読んでくださいね♪
そもそも「ことば」って何?どうやって育むの?
今回の記事は連載なので、この部分はvol.01でも触れた内容です。
すでに読んだ方はこの段落は飛ばしてくださいね!
辞書によると「ことば」とは、“音声や文字などにより表され、特定の意味を伝達する手段となる表現およびその体系のこと”と記載があります。では、ことばさえ習得すればコミュニケーションが成立するのでしょうか?ーいいえ、違います。
言葉が記号として体系化されたものが「言語」となり、それを使用して人と人はやり取りを交わすことが出来ます。このやりとりがいわゆる「コミュニケーション」となります。コミュニケーションは、話しことばだけではなく、声のトーンや速度などの言語の周辺的側面や表情や視線などの非言語情報を組み合わせて行うことになります。
我が子には「コミュニケーションが成立することばを習得させたい!」そう思う親御さんも多いと思います。コミュニケーションが成立することばを習得するには、関わる大人の存在が不可欠です。シーンに合わせたことば、声のトーンや顔の表情、そして事象の内容から子どもはことばを学習します。つまり、大人と子どもが相互に反応し合う経験が、ことばの習得には必要なのです。
余談ですが、行政などで頻繁に「お子さんといっぱい関わってあげてください」と言われますよね。ママになってから勉強して言語聴覚士になった私は、はじめての子育てに行き詰り行政へ相談した経験があります。その際、とにかく関わりを増やすようにアドバイスされましたが、その理由や根拠は「?」のままでした。とってもモヤモヤした中で子育てをした経験があるので、このブログでは、なるべくわかりやすく、根拠やエビデンスも共にご紹介していければなと思います。
「ことば」を育てる簡単な方法
大人の気持ちや行動をことばにする
ことばをまだ理解できないから話しかける必要はない、なんて思っていませんか?効率を重視して子どもへ話しかけずに黙々と家事をこなしていませんか?独り言をいいながら子育てや家事をするのは恥ずかしいなと感じる方もいるかもしれません。でも、大人の独り言が、子どものことばを育てます。
具体的な方法をご紹介しますね。まずは自分の気持ちに目を向けましょう。子どものお世話をしていると、自分の気持ちは後回しになってしまい、つい目の前の子どものことばかり考えてしまうことがあります。でも、自分の心にも目を向ける時間はとても大切な時間です。そっと目を閉じて心をイメージして1秒待ってみましょう。目を向ければ自分の気持ちにも気付くことができます。たとえば、ふわっとお腹が減っているなーと自分の気持ちが浮かんできたとします。気が付いた自分の気持ちを言語化しましょう。「ママはお腹が空いたな、ごはんをつくろうかな」と、シンプルなことばを口に出してみます。この時、わかりやすいことばを選ぶように意識しましょう。「空腹です」より「お腹が空いた」のほうがわかりやすいですね。
シンプルなことば選び以外にも、自分の気持ちや行動を独り言にする際には、いくつかポイントがあります。主語に「ママ」など自分を表す言葉を添えてことばにするのも大切なポイントです。「誰が」「どう感じているのか」を意識して独り言にしましょう。先ほどの例では、(誰が)が「ママは」となり、(どう感じているのか)が「お腹が空いたな」となります。
子どものことばを育てる大人の独り言には、もうひとつポイントがあります。「行動」にも着目して独り言を行うと効果的です。人の行動には意図があります。つまり、人は何かを感じ、その次の行動を起こします。人の行動には理由や意図があるのです。気持ちを表す独り言の次に、自分の「行動」をことばに発してみましょう。先ほどの例では、(気持ち)が「ママはお腹が空いたな」となり、(行動)が「ご飯をつくろうかな」となります。
いつだって子どもは大人の声やことばを聞いています。大人の独り言から、人が何かを感じる生き物であること、ことばを使って想いを他者と共有できること、気持ちがあるから行動が生まれることなどを子どもは学習します。主語を「自分」にして、自分の気持ちや行動を子どもへ伝えてみてください。コミュニケーションのはじまりを感じ、すこしワクワクした感覚になりますよ。それに、自分の気持ちにも目を向ける、良いきっかけにもなるのでオススメです。この方法は遊びの中での声掛けにも応用できます。遊びのなかでことばを育てるかかわり方については、また今度、しっかり記事にまとめますね。
子どもの声やことばをそのまま真似る
子どもの声やことばを真似っこしたことはありますか?子どもの声やことばを真似て聞かせてあげると、ことばが育ちます。
具体的な方法ですが、至って簡単!ひとことで言うと「耳コピ」作戦です。たとえば、子どもが「まん…ま」といったら、リズムや声のトーンも真似て「まん…ま」と真似をしてみてください。そっくりそのまま真似るだけです。音と音の「間」や声の高さやトーン、母音などにも意識してみると上手に真似ができます。
簡単な「子どもの声やことばをそのまま真似る」という大人の行動を通し、子どもは自分の発した声やことばの素晴らしさを実感します。この感覚が自己肯定感を高めるための土台にもなります。こんな簡単なことで自分の声やことばの素晴らしさを実感させて、自己肯定感を高めることができるのか?と疑問を抱いている人も多いでしょう。理由については次の段落で説明しますね。
なぜ子どもは「大人からの真似」で自分の声やことばの素晴らしさを感じるのでしょうか。理由は簡単です。「自分が声やことばを発したら何か面白いことが起こる」と学習するためです。想像してみてください。自分が声やことばを発したら、大好きなママが真似っこしてくれるとしたらどうでしょう?なんだか嬉しくなりますよね。こうして子どもは声やことばが他者とのやり取りにおいて大事なものであり、素晴らしいものだと理解しはじめます。声やことばが誰かを動かす素晴らしいツールであると学習していき、人とのかかわりに興味を抱きはじめ、ことばの世界への興味も広がっていきます。
子どもは、人とかかわることの面白さを知ると「ことばの力」はぐんぐん育ちます。真似っこ耳コピ作戦は、子どものコミュニケーション意欲を育むよいきっかけになります。それに、大人の声を通して自分の発した声やことば聞くことは、聴覚にも良い刺激となります。聴覚を育てることも、とっても大切なことばの側面です。聴覚の話はまた今度、しっかり記事にしますね。
まとめ
ことばを育てるかかわり方
・大人の気持ちや行動をことばにする
・子どもの声やことばをそのまま真似る
「言葉を育てたい、言葉が遅い、お家でできる事が知りたい!」そんな時は簡単にできる、この2つを試してほしいです。
この記事はインリアル・アプローチ、言語心理学的療法のなかから一例の紹介でした。インリアル・アプローチについてはシリーズで記事にしており、この記事はvol.2です。まず最初は、vol.1から試してみてくださいね。
大人の働きかけで子どもの持っている力を最大限に引き出すことが出来るといいですよね。これからも、子育てがおもしろくなる確かな情報を少しずつ発信していきたいと思います。
参考・エビデンス
子どもと大人が相互に反応し合うことで、学習とコミュニケーションを促進させるインリアル・アプローチ/INterREActive Learnig & Comunication言語心理学的技法の一部をご紹介しました。ことばの発達には個人差があり、最適なアプローチ法も個人により異なります。今回は、あくまでもひつの例としてご紹介しました。ご質問やご感想などは、お気軽にコメントください。
ライター
2児の母、言語聴覚士
不妊や流産を経て、第一子を早産で出産。ひどい癇癪や発達に関する悩みが尽きず、子どもの力を引き出すための声掛け方法などを調べはじめる。本格的に子どもの発達について学ぶために、子育て中に復学し言語聴覚士免許を取得。専門家による正しい情報発信、気軽に相談ができる場所の提供を目指してハグクミラボを開設。