この記事の要点
発達障害は、子どもの努力不足や親の育て方によって生じるものではありません。発達の特性は一人ひとり異なり、複数の特性が重なって見られることもあります。診断名だけで子どもを理解しようとせず、「どんな場面で困っているのか」「何が助けになるのか」を丁寧に見ていくことが大切です。

この記事でわかること

  • 発達障害とはどのような状態を指すのか
  • ASD・ADHD・SLDの主な特徴
  • 特性の重なりや、一人ひとりの違い
  • 診断はどのように考え、進められるのか
  • 診断前・診断後に相談できる場所と支援の考え方

1.発達障害とは?

「発達障害」という言葉を聞くと、特定の診断名や、目立った行動を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし、発達障害は一つの決まった姿を指す言葉ではありません。

日本の発達障害者支援法では、自閉症、アスペルガー症候群などの広汎性発達障害、学習障害、注意欠如・多動性障害などを含む、通常低年齢で症状が現れる脳機能の障害として定義しています。また、法律では、本人の日常生活や社会生活に生じる制限と、周囲の環境にある「社会的障壁」にも目を向けています。[1]

一方、医学的な診断分類であるDSM-5-TRでは、これらに関連する診断は「神経発達症群(Neurodevelopmental Disorders)」の中に整理されています。自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(SLD)のほか、知的発達症、コミュニケーション症群、運動症群なども含まれます。WHOのICD-11にも、神経発達症に関する分類があります。[2]

つまり、日本の法律で使われる「発達障害」と、DSM・ICDにおける医学的な診断分類は、関連しているものの、完全に同じ範囲を指すわけではありません。 この違いは、海外の統計や制度を読むときにも大切になります。

2.代表的な発達特性にはどんなものがある?

ここでは、子どもについて保護者が知る機会の多いASD・ADHD・SLDを紹介します。実際の診断や支援では、これら以外の特性や、知的発達、ことば、運動、感覚、情緒面なども含めて考えます。

自閉スペクトラム症(ASD)

人とのやりとりや、社会的なコミュニケーションに特有の難しさが見られること、興味や行動の範囲が限られたり、同じ行動を繰り返したりする特徴が見られることがあります。予定の変更が苦手、感覚刺激に敏感または気づきにくいなどの様子もあります。ただし、現れ方は一人ひとり異なります。

注意欠如・多動症(ADHD)

不注意、多動性、衝動性を中心とする特性が、年齢や発達段階に比べて強く、生活や学習に影響している状態です。忘れ物やうっかりミスが多い、順番を待つことが難しい、じっとしていることが苦手など、見え方はさまざまです。

限局性学習症(SLD)

読むこと、書くこと、計算することなど、特定の学習技能の習得や使用に著しい困難が見られる状態です。知的発達全体の遅れだけでは説明できない、特定の学習上のつまずきが続くことが特徴です。3つすべてに困難があるとは限らず、読むことだけ、書くことだけ、算数の特定の領域など、困難の現れ方は異なります。[3]

3.同じ診断名でも、特性の現れ方は一人ひとり違う

ここは、発達障害を理解するときに特に大切にしたいところです。

例えば、ASDと診断された子ども同士でも、人との会話のやりとりに難しさが目立つ子、予定の変更に強い不安を感じる子、音や肌触りなどの感覚に強く反応する子など、困りごとは異なります。ADHDの特性がある子どもでも、不注意が目立つ場合、多動性や衝動性が目立つ場合、その両方が見られる場合があります。

さらに、複数の特性が重なることもあります。例えば、ASDの特性に加えてADHDの不注意が見られたり、読み書きの困難と注意の調整の難しさが一緒に見られたりすることがあります。国立障害者リハビリテーションセンターも、発達障害の特徴が重なり合うことや、年齢・環境によって目立つ様子が変わることを説明しています。[4]

ただし、ここで注意したいのは、特性の重なりを、診断名の数だけで表せるわけではないということです。診断基準を満たすかどうかと、日常の中でどの特性がどの程度現れるかは、同じものではありません。

同じ子どもでも、家庭では落ち着いて過ごせる一方、集団の中では音や情報の多さに疲れてしまうことがあります。学年が上がり、周囲から求められることが増えて初めて、困りごとがはっきりする場合もあります。

そのため、診断名だけで「この子はこういう子」と決めつけず、どの場面で、どのような困難があり、どんな環境なら力を発揮しやすいのかを見ていくことが大切です。

POINT|芽吹きのヒント
発達特性は、診断名ごとにきれいに分かれるものではありません。複数の特性が重なることもあり、その組み合わせや程度、生活の中での現れ方は一人ひとり異なります。図の円の大きさや重なりは、割合や重症度を表すものではなく、多様性を理解するための概念図です。

4.発達障害の診断は、どのように行われる?

発達障害の診断は、チェックリストの点数だけで決まるものではありません。医師などの専門家が、診断基準を参照しながら、子どもの発達の経過、現在の様子、家庭や園・学校での困りごと、生活への影響などを総合的に評価します。

評価では、保護者からの聞き取り、母子健康手帳や成長の記録、園・学校での様子、行動観察、必要に応じた心理検査や発達検査・学習面の検査などが参考になります。検査は子どもの得意・不得意や支援方法を考える手がかりになりますが、一つの検査だけで診断が決まるわけではありません。

診断の考え方は、特性によっても異なります。

  • ASDでは、社会的コミュニケーションや相互的な関わり、限定的・反復的な行動や興味、発達早期からの経過などを確認します。
  • ADHDでは、不注意や多動性・衝動性が複数の場面で見られるか、生活や学習にどのような影響があるか、他の要因で説明できないかなどを確認します。
  • SLDでは、読む・書く・計算する力のどこに、どのような困難が続いているのか、学習歴や指導・支援への反応、標準化された検査などを含めて評価します。

例えば、ASDには血液検査のように単独で診断を確定する検査はなく、発達歴と行動の情報をもとに評価します。米国CDCも、ASDの診断では発達歴と行動を確認し、複数の段階で評価することを説明しています。[5]

診断は、子どもにレッテルを貼るためのものではありません。困りごとの背景を理解し、本人に合う支援や環境調整につなげるための手がかりです。

5.「8.8%」は発達障害の診断率ではない

発達障害について調べていると、「通常の学級に在籍する小・中学生の8.8%に発達障害の可能性がある」という数字を目にすることがあります。

これは、文部科学省が2022年に公表した調査で、小・中学校の通常の学級に在籍し、担任等の回答から「学習面又は行動面で著しい困難を示す」と推定された児童生徒の割合です。高等学校では2.2%と推定されました。[7]

ここで重要なのは、この調査は医師の診断や専門家チームによる判定ではないという点です。文部科学省自身も、発達障害のある児童生徒数の割合を示すものではなく、特別な教育的支援を必要とする児童生徒数の割合であると注意しています。

つまり、8.8%をそのまま「発達障害の子どもの割合」と読み替えることはできません。一方で、診断の有無にかかわらず、学習面や行動面で困難を感じ、何らかの教育的支援を必要とする子どもがいることを考える材料にはなります。

6.診断がなくても、相談していい

「診断がついてからでないと相談できない」と思う必要はありません。ことばの発達、集団での過ごし方、読み書き、宿題、友だちとの関係など、気になることがあれば、診断の前でも相談できます。

相談先としては、自治体の保健センター・子育て相談窓口、発達相談を行う機関、発達障害者支援センター、かかりつけの小児科、児童精神科や発達外来などがあります。園や学校の担任、特別支援教育コーディネーターに、日常の様子を共有することも一歩です。特に限局性学習症(SLD)に関する教育上の配慮では、医学的診断がつく前でも、困りごとに気づいた段階で学校と確認・配慮・指導を相談できます。一方、入学者選抜など、試験上の合理的配慮では診断書の提出が求められる場合があります。[5]

国の発達障害情報・支援センターは、発達障害者支援センターでは診断がなくても相談でき、必要に応じて医療機関や支援機関を紹介していると案内しています。[8]

相談に行く前に、次のようなことをメモしておくと、状況を共有しやすくなります。

  • どんな場面で困りごとが起こりやすいか
  • いつ頃から気になっているか
  • 家庭と園・学校で様子に違いがあるか
  • うまくいく条件や、本人が楽しめることは何か
  • これまで試した工夫と、そのときの反応

「できないこと」だけでなく、「できること」「好きなこと」「落ち着いて取り組める条件」も一緒に伝えると、子どもを多面的に理解する助けになります。

7.大切なのは、診断名よりもその子に合う支援

同じ診断名でも、必要な支援は同じではありません。視覚的な予定表が役立つ子もいれば、短く具体的な声かけが役立つ子、静かな場所で力を発揮できる子、課題を小さく分けることで取り組みやすくなる子もいます。

例えば、家庭では次のような工夫が考えられます。

  • 口頭の説明だけで伝わりにくいときは、写真・絵・文字なども使う
  • 一度に多くの指示を出さず、短く区切って伝える
  • 予定の変更は、可能な範囲で早めに知らせる
  • 音・光・におい・衣服の感触など、負担になっている刺激を見直す
  • 読み書きや計算に時間がかかるときは、道具や課題量、回答方法を調整する
  • できた結果だけでなく、取り組み方や工夫も具体的に認める

どの方法も、すべての子どもに当てはまるわけではありません。本人の反応を見ながら、合う方法を一緒に探していくことが大切です。

まとめ|芽吹きのヒント

発達障害には、ASD・ADHD・SLDをはじめ、さまざまな特性があります。特性の組み合わせや程度、生活の中での現れ方は一人ひとり異なり、同じ診断名だからといって同じ支援が合うとは限りません。

診断は子どもを分類するためではなく、理解と支援につなげるための手がかりです。診断があるかどうかにかかわらず、困りごとがあれば相談してかまいません。

子どもの「できない」だけを見るのではなく、「どんなときに難しくなるのか」「どんな環境ならできるのか」「何が好きで、どんな力を発揮しているのか」。その子自身に目を向けることが、育ちを支える第一歩になります。

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参考文献・参考資料

  1. e-Gov法令検索『発達障害者支援法』第2条・第2条の2. https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC1000000167
  2. American Psychiatric Association. DSM-5-TR(2022). 日本語版:医学書院『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』. https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/112206
  3. WHO. Clinical descriptions and diagnostic requirements for ICD-11 mental, behavioural and neurodevelopmental disorders (CDDR). https://www.who.int/publications/i/item/9789240077263
  4. 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター『発達障害とは』. https://www.rehab.go.jp/ddis/understand/whatsdd/
  5. 日本小児科学会ウェブサイト掲載『限局性学習症(Specific Learning Disorder)』(文責:日本小児精神神経学会 移行期支援委員会、2026年公開). https://www.jpeds.or.jp/uploads/2026-04/20260416_GL118.pdf
  6. CDC. Clinical Testing and Diagnosis for Autism Spectrum Disorder. https://www.cdc.gov/autism/hcp/diagnosis/index.html
  7. 文部科学省『通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)』. https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2022/1421569_00005.htm
  8. 発達障害ナビポータル『相談できる窓口を教えて欲しい』. https://hattatsu.go.jp/supporter/welfare/faq/welfare-faq01/